A・デイヴィス 『楽園への道』 [クラシック]
以前も書いたような・・・、体や心が疲れたりすると自然と聴く機会が多くなるのが『ディーリアス』の作品です。私にとってその中でも『楽園への道』は特に愛すべき1曲です。
サー・アンドリュー・デイヴィスが、BBC交響楽団と90年代にテルディックへイギリス作曲家の作品を集中的に録音していた時期のCDです。1992年12月、ロンドンのセント・オーガスティン教会での録音。
『楽園への道』は歌劇『村のロメオとジュリエット』で市場での雑踏から、サリーとヴァレンヒェン2人が小船に乗り旅立つ場面での間奏曲です。市場の場面、騒々しさはプッチーニの『ボエーム 第二幕』同様に人々の行き来を音楽で克明に表現している秀作だと思います。その場面から切れ目なく続くこの間奏曲は、甘く、切なく、悲しい、しかしディーリアス独特のハーモニーとメロディーが大変美しく引き込まれる作品です。はっきり言って癒されます。
オリジナルは、3管編成で大変規模が大きくこの部分だけをコンサートピースとして取り上げるには困難だとのことで、この間奏曲の挿入をディーリアスへ進言したビーチャムが、2管編成へ編曲しこの名曲を大いに広めたと思います。このA・デイヴィス盤を含む多くが、このビーチャム編曲版により録音されています。聴くところによると、ディーリアスが生前最後に聴いた音楽がこの『楽園への道』で、ビーチャム指揮によるSP盤だとのことです。
A・デイヴィスのこの演奏、非常に美しくディーリアス独特のハーモニーを奏で部屋の空気を一変させます。最近の活躍を考えると当たり前のことでしょうが、素晴らしい演奏です。
このCD、購入してからまともにメインシステムで聴いた事がありませんでした。素晴らしい録音です。DECCAの名エンジニア:ウィルキンソン録音を彷彿とさせます。左右のスピーカー全面に広がる弦楽器群。オーディオの状態がよければ、弦楽器群はスピーカーの前定位します。そして非常にクリアー定位し、距離感を持って響く管楽器群。オーケストラをしっかり支える低弦群は、中央やや右よりから右側へ広く定位します。演奏と共に録音にも酔ってしまいます。
エンジニアは、トニー・フォークナー。フリーランスのエンジニアです。DECCAが常に使い続けた『DECCA TREE』のシステムで、今のDECCAのエンジニア以上に素晴らしい録音を続けている逸人です。ナクソスの日本人作曲家シリーズは、確かT・フォークナーの録音です。
この名演・名録音が今は、一般に入手できないのは非常に残念なことです。
あるべりっひさん、こんにちは。
ディーリアス関連の記事、リンク、TBさせていただきました。
よろしくお願いします。
by euridice (2007-08-31 09:00)